2017-01-01から1年間の記事一覧
文化進化の考古学 作者: 中尾央,松木武彦,三中信宏 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2017/08/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る David Bussの進化心理学の教科書に手を出す傍らで『文化進化の考古学』を読んでみたところ,第1章の…
中尾央『人間進化の科学哲学』における罰と教育の章についての補足として,Cushmanの論文を読んでみた.以下に内容をまとめてみる. Abstract ヒトの間における罰の進化には文化的制度(cultural institutions)が重要だ. 文化的制度は外適応(exaptation)で…
第7章「教育の進化」 本章では教育の進化について述べられている.罰がヒト以外でも頻繁に見られるのに対し,教育はヒト以外ではあまり見られない.それゆえ,ヒト特有の教育に特化した心的形質があるのではないかと考えるのが,ナチュラル・ペダゴジー説で…
第6章 「罰の進化」 本章では人間行動進化の実例の一つとして罰の進化を取り上げる.罰の進化はこの20年ほど研究が行われてきており,有力な仮説として「行動修正戦略」としての罰の進化が提起されている.しかし,本章では(他の動植物同様に)人間におけ…
第5章「文化進化のパターン研究」 本章では文化進化のパターン研究を取り上げている.パターン研究の中で最も重要なものが歴史的パターンの研究であり,その方法として用いられるのが系統学(phylogenetics)である.人間行動進化の観点で言えば,ヒトの近…
第4章「文化進化のプロセス研究」 第Ⅱ部は本章と次の第5章で構成されている.第Ⅱ部では文化進化の具体例を検討し,それらを文化の「プロセス研究」と「パターン研究」に分け,本章ではプロセス研究を扱う.まず文化について,Richerson and Boyd (2005, p.…
第3章 遺伝子と文化の二重継承説 文化進化の理論に関して,二重継承説より以前に文化進化を考察したミーム論について触れる.ルウォンティンによる選択の三条件(形質の遺伝,変異,適応度の差異)を遺伝の原理とし,それをドーキンスが自己複製子(レプリ…
第2章 人間行動生態学 人間行動生態学について、エドワード・ウィルソンの提唱した社会生物学はもはや影響力を持っていないとし、アレクサンダーらの研究プログラムから概観していく。 アレクサンダーは、1960年代以降の行動生態学の進展を受けて、それらの…
第1章 進化心理学 進化心理学の沿革とその方法論、進化心理学への批判の検討が行われる章。 1980年代半ば以降、コスミデスとトゥービーらの研究がスタートして進化心理学が勃興する。 コスミデスとトゥービーらは「個人差ではなくすべての人間に共通する普…
人間進化の科学哲学―行動・心・文化― 作者: 中尾央 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2015/04/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 本書について著者は人間行動進化学を「科学哲学の観点から考察する本」(p. 1)と位置づけて…